茨城大学農学部×コマツ 農業ブルドーザーを用いた実証研究
収穫した23.5トンの新米を地域の子ども食堂等へ寄贈
11月4日、農学部と建設機械メーカーのコマツとの共同研究で栽培?収穫した新米(あきたこまち)を寄贈する贈呈式が、阿見キャンパスで開催されました。贈呈式には宮口右二農学部長、実証研究をおこなっている黒田久雄教授、浅木直美准教授のほか、コマツから建機ソリューション本部グリーン事業(林業?農業)推進部の坂井睦哉部長、茨城工場総務部の冨下敬資部長、杉田一彦主幹が出席し、寄贈先である子ども食堂運営団体「ami seed」の清水直子代表、県生活協同組合連合会の井坂寛専務理事に目録を手渡しました。
農学部とコマツは、コマツが開発した農業ブルドーザーを用いて、乾田直播水稲栽培の有効性についての実証研究を行っています。
水田にイネの苗を植えるのではなく、イネの種子を直接土に播く「乾田直播水稲栽培」は、圃場面の高精度な均平が求められますが、苗作りや田植えなどのコストを削減させ、休耕地活用の促進や地域農業の持続可能性につながることが期待されています。
そうしたなか、コマツと茨城大学農学部は2020年より、ブルドーザーを用いた乾田直播水稲栽培の実証試験を稲敷市の大規模圃場において開始しました。コマツの農業用ブルドーザーは、GNSS測量データを用いた高精度ICTによりブレードの高さを自動制御することにより、5.6ヘクタールの大規模圃場において、直播水稲栽培に必要となる高精度な均平を実現しました。また、農業ブルドーザーは後部に農業用アタッチメントの装着を可能としたことから、耕起作業や種まき作業を行うことができます。これらの機能を最大限活用して水田の均平精度を高めることで、給排水を低減し環境配慮型の新たな灌漑システムの実証も進めています。
2020年の開始以降、この実証研究で収穫した新米については毎年、地域の子ども食堂や学生等に寄附をしています。
今年の収量は圃場1ヘクタールあたり4.2トンとなり、昨年同圃場で収穫した1ヘクタールあたり3.6トンを約20%上回る結果となりました。宮口農学部長は「コマツの高い技術力と、黒田教授、浅木准教授の研究力が実を結び、今年もおいしいお米を子どもたちに食べてもらえることをうれしく思う」と話しました。
また、コマツの坂井部長は「実証研究が始まった2020年は、新型コロナの感染拡大の影響により栽培期間を短縮せざるを得ず、満足のいく結果が得られなかったが、昨年からは大規模水田において本格的な試験を実施することができている。ブルドーザーを使った稲作のトライアルは、従来の農業機械の歴史と比べるとまだまだ浅い。この技術を大きく育てていくために、さらにノウハウを蓄積していきたい」と、今後への意欲を示しました。
新米の寄贈を受けた「ami seed」では、運営する子ども食堂で、早速130食のお弁当を子どもたちに手渡したとのことです。清水代表は「子ども7人に1人が貧困と言われているが、現場の肌感覚では6人に1人ではないかと思っている。いただいた新米を届けることで、食に興味のない子どもたちに『お米っておいしいんだよ』と伝えていきたい」と感謝を述べました。同じく新米を受け取った県生協連合会の井坂専務理事は「12月には茨大生を含めた学生への食の支援として活用させていただく予定。子どもたちが元気に育っていけるように、地域と連携しながらサポートしていけたら」と話しました。