令和5年度入学式を挙行しました【動画あり】
4月7日(金)、茨城大学の令和5年度入学式が挙行され、2,261人が入学しました。
入学式?コミットメントセレモニーの様子を写真で振り返ります。
令和5年度入学式 学長式辞
茨城大学の学部?大学院及び特別専攻科に入学された2,261名の学生の皆さん、ご入学おめでとうございます。茨城大学の教職員?在学生一同、皆さんを心から歓迎致します。そして、これまで皆さんを支えてこられたご両親をはじめ、ご家族の皆様方にも心からお祝い申し上げます。
茨城大学は、来年、創立75周年、さらに最も古いルーツ校である拡充師範学校の創設から数えて創基150周年という節目を迎えます。この75年、150年という節目からすると、来年から、茨城大学に何か新しいことが始まるのですか?という期待を新入生の皆さんは持たれるかもしれませんね。もちろん、私たちは考えています。2年前には、教職員だけでなく、学生たちの意見も聞いて、国際社会が大きく変化するなかでの、茨城大学の近未来の在り方を議論し、その実現に向けてイバダイ?ビジョン2030を策定しました。
そのビジョンを一言で言えば、「自律的でレジリエントな地域が基盤となる持続可能な社会の実現」に貢献する大学です。最初の"自律的"という言葉は、「自ら律する」という意味で、自らが行動規範を作って、それに沿って行動することです。受け身で動くのではなく、主体的に考えて行動することです。これは、皆さんたちに身に付けて欲しいというだけでなく、大学の構成員、さらに大学という組織でも、そして、地域社会そのものも、そうあるべきだと思っています。
実は、1949年に新制大学として、茨城大学がスタートするとき、当時の茨城新聞社?社長は、「わが県民も国立茨城大学は文部省が作ってくれるのだなどとの甘えを貧ってはならない。わが県の最高学府創建はわが県民個々の公的責任感の発露によってのみ実現させることを特に銘記すべきである。」と語ったのです。自律性は、その当時から受け継いできた「本学の建学精神」とも言えるでしょう。
「自律的でレジリエントな地域」の「レジリエント」とは、例えば、コロナ禍のなかでも、挫けずに、逆境に適応して、困難を乗り越え、学びを続けた皆さんのような姿です。地域社会も、そのような適応力を持つように、本学は研究を行っています。具体的には、次の3つ目のキーワードで説明します。
ビジョンの3つ目のキーワードは、「持続可能性」、英語で言えば「sustainability」です。皆さんは、SDGs、「持続可能な開発目標」をご存知ですね。茨城大学は、SDGsという言葉が生まれる前の2006年から、「持続可能な社会」の在り方について研究してきました。その当時、日本を含めてアジア?太平洋地域は、経済の成長が見込まれる一方で、気候変動や自然災害の厳しい影響を受ける現場であり、そのような課題に向かって適応していく社会づくりが必要である、と認識していたからです。そこで、気候変動適応を研究の基軸にして、"サステイナビリティ学"という学問分野の確立を目指して、5つの学部が連携しながら、研究と教育に取り組んできました。皆さんは、その成果を、「サステイナビリティ学入門」という授業で学ぶことができます。
さらに、持続可能な社会の実現を加速するために、この4月に、茨城大学はカーボンリサイクルエネルギー研究センターを設立しました。この研究センターの目標は、国内外から人材を結集し、カーボンニュートラル燃料に関する研究を世界的にリードしていくことです。我が国が目指そうとしている脱炭素社会の実現と、世界的な課題であるエネルギー問題の両方を合わせて解決していくものです。皆さんのなかにも、卒論や、修士論文、博士論文の研究で、この研究に参画する人たちが生まれることを期待しています。
さて、これから大学での学びをスタートさせる皆さんに確認しておきたいことが一つあります。それは、高校で皆さんが行ってきたアクティブ?ラーニングの「ラーニング」という単語をどう翻訳するか?です。次の3つのどれだと思いますか? 学習、勉強、学び。
この問いかけの出典は、教育学者の佐藤学先生がある冊子に連載している「教育用語?誤訳誤解辞典」というコラム記事です。佐藤先生によれば、英語のlearningの翻訳として、「『学習』は誤訳ではないが、正解とは言えず、『勉強』は明らかに誤訳であり、『学び』が原義に近い翻訳である」と述べています。さらに、「『勉強』の本来の意味は『無理すること』であり、『無理して学ぶ』という意味で使われるようになった」とのことです。この解釈からすれば、「受験勉強」とは、受験のために、「無理して学ぶ」ことであり、ラーニングとは違うものと言えますね。
では、ラーニングが意味する本来の「学び」とは、どんなものでしょうか? 佐藤先生によれば、「学び」とは、対象世界との対話、すなわち、「世界づくり」、他者との対話、すなわち、「仲間づくり」、自己との対話、すなわち、「自分づくり」の三つが統合された「対話的実践」です。
分かりやすいイメージとして、佐藤先生は「旅」に例えています。「学びの旅をとおして、新しい世界と出会い、新しい他者と出会い、新しい自己と出会い、それらと対話して新しい世界と新しい自分を創造する」ことです。このような学びの旅を、皆さんがスタートさせることを、私たち教職員一同は期待していると同時に、応援していきます。
以上をもって入学式の式辞といたします。
本日は、入学、誠におめでとうございます。
令和5年4月7日
茨城大学長 太田寛行