カーボンリサイクルエネルギー研究センターを日立キャンパスに開設
―日立の街を拠点に、カーボンリサイクル技術の研究?開発?実装を目指す
2023年4月1日、本学日立キャンパスに新たな研究組織「カーボンリサイクルエネルギー研究センター(CRERC)」が開設されました。
カーボンニュートラル実現の目標年とされている2050年に向けて、社会経済活動を維持しながら脱炭素化を図ることが求められています。その方法として、再生可能エネルギーや脱炭素燃料(水素やアンモニア)の燃焼に伴う熱エネルギーの利用や、二酸化炭素を回収して新たな資源として有効活用する「カーボンリサイクル」の技術開発が重要視されています。
本学が立ち上げたカーボンリサイクルエネルギー研究センターは、DAC(Direct Air Capture)と呼ばれる施設を利用した大気中の二酸化炭素の「回収」、回収した二酸化炭素を利用した新たな燃料の「合成」、脱炭素燃料の安全で高効率な「利用」の3本の柱を掲げ、カーボンリサイクル技術の研究?開発と社会実装を目指します。
「回収」「合成」「利用」の各ユニットには、多様な分野にわたる10人の研究者が所属し、さらに「オープンサイエンスユニット」では、国内外の研究者?企業との連携、学生や地域住民に向けた教育活動を通じ、様々なアイデアの創出を担うとともに、即戦力人材を育成します。
CRERCの開設にあたり、4月5日、日立キャンパス内の「小平記念ホール」において、記念式典と施設見学ツアーを実施しました。記念式典には、日立市の小川春樹 市長、茨城県の横山柾成 副知事、経済産業省関東経済産業局の太田雄彦 局長といった行政関係者に加え、産業界からも自動車用内燃機関技術研究組合の平井俊弘 理事長、株式会社日立製作所研究開発グループの鈴木朋子 技師長を来賓としてお招きし、ご祝辞を賜りました。
来賓の皆様からは、それぞれの分野における脱炭素化への姿勢が示された上で、センターの活動や今後の連携への期待が述べられました。
式典で太田寛行学長は「このCRERCを中心に、産官学が連携して脱炭素社会の実現に向けて進んでいければ。日立の街が、カーボンリサイクルの世界のモデルになることを期待したい」と述べました。また、「DACを積んだ車が自動運転で町中を回り、回収した二酸化炭素をエネルギーに変える、というのが夢。これが将来、日立の街で実現できたらいい」と期待を込めました。
また、CRERCのセンター長を務める大学院理工学研究科(工学野)の田中光太郎教授は「これまでは大気中の二酸化炭素をどう減らすか、出さないようにするにはどうすればよいかという議論だったが、二酸化炭素を資源にすればいいと発想を転換した。CRERCでは、二酸化炭素を回収して付加価値の高い化成品や燃料を作り無駄なく利用するという、一気通貫したサイクルで回していくことを実証していきたい。今後、2027年度までにミニプラントによるDACや燃料合成の実証を進め、31年度を目指して学内に設備を作りたいと考えている。日立市のゼロカーボンシティ化に協力?貢献し、ここがモデルとなって日本全国や世界へ展開することを目標にしたい。我々は真の二酸化炭素削減に向け、各方面と見交換を密にして研究活動を推進していく」と決意を示しました。
式典後には、日立キャンパス内にある関連実験設備の見学ツアーを実施。水素?合成燃料評価用エンジン実験装置や、大気濃度レベルCO2回収基礎実験装置を、田中センター長や金野 満 研究?産学官連携機構長らが説明?紹介しました。
CRERCでは今後、今年5~6月頃に設立記念シンポジウムを、7~9月に海外から研究者を招いた国際セミナーを実施する予定です。
茨城大学カーボンリサイクルエネルギー研究センター(CRERC)概要
【所在地】茨城県日立市中成沢町4-12-1(茨城大学日立キャンパスN5棟内)
【センター長】田中 光太郎(大学院理工学研究科(工学野)教授)
【所属教員】10名
回収ユニット |
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李 艶栄(工/熱流体工学) |
境田 悟志(工/熱工学) |
西澤 智康(農/応用環境微生物学) |
合成ユニット |
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福元 博基(工/高分子化学) |
境田 悟志(工/熱工学) |
近藤 健(工/有機合成化学) |
利用ユニット |
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酒井 康行(工/熱工学) |
田中 光太郎(工/熱工学) |
平田 輝満(工/交通工学) |
吉田 友紀子(工/建築環境工学) |
オープンサイエンスユニット |
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センター所属メンバー全員 |
※( )内は所属/専門分野。所属の「工」は理工学研究科工学野、「農」は農学部を示す。
【Webサイト】https://crerc.ibaraki.ac.jp/
(取材?構成:茨城大学広報室、撮影:小泉慶嗣)