創立記念日に寄せた学長メッセージ
―未来は「公的責任感」をもったすべての人たちで共創するもの―
本日5月31日は、茨城大学の創立記念日です。
茨城大学は、1949(昭和24)年に文理?教育?工の3学部をもつ新制国立大学として誕生しました。その後、1952(昭和27)年に茨城県立農科大学が本学に移管され、現在の5学部へとつながっています。来年には創立75周年の節目を迎えるとともに、最も古いルーツである拡充師範学校の創設から数えれば、創基150周年も同時に迎えることとなります。
この間、ルーツ校から今に至る茨城大学を支えてくださった皆様に、心より感謝申し上げます。
「茨城大学三十年史」には、1年1948(昭和23)年5月19日付に茨城新聞に掲載された、後藤武男同社社長による「茨城大学の創建」という論説が紹介されています。
......文部省は教育の中央集権化を極力避けて地方分権化を推進し、地方文化を代表するに足る地方大学の特色を発揮させるのに努めしめなければならぬ。また私は、大学設立に際し、文部省が机上のプランを徒らに押しつけることに絶対に反対であって、国家財政も考慮してのことなれど成るべく地方人民の意志や希望を飽くまでも尊重して実現させるよう取計らうべきである。聊かでも大学教育の官僚統制化などとの非難を蒙らぬようくれぐれも注意が肝要である。翻ってわが県民も国立茨城大学は文部省が作ってくれるのだなどとの甘えを貪ってはならない。わが県の最高学府創建はわが県民個々の公的費任感の発露によってのみ実現させることを特に銘記すべきである。
このメッセージは、地域の未来はそこで生きる私たち自身が考え、「公的責任感」をもって自ら作り上げていくものであるということ、そして茨城大学はその結節点としての役割を果たすべきであるということを伝えています。
2021年3月に発表した「イバダイ?ビジョン2030」では、「自律的でレジリエントな地域が基盤となる持続可能な社会の実現」を目指し、「世界の俯瞰的理解と多様な専門分野の知の追究」「多様な主体を結びつける結節点としての機能強化」「持続可能な環境づくりのための先進的行動の展開」の3つの実行を約束しています。茨城大学の創立にあたって地域社会から受け取ったメッセージは、それから75年を経た今も、私たちのビジョンにしっかり根を張っています。
そのような未来へ向けた共創の歩みのひとつとして、今年4月には茨城大学カーボンリサイクルエネルギー研究センター(CRERC)を立ち上げました。「脱炭素」という、産業革命以来の文明の転換をももたらすような目標に対し、CRERCは「カーボンリサイクル」という野心的なコンセプトを掲げ、二酸化炭素の「回収」、それを再利用した燃料の「合成」、高効率で安全な「利用」という3本の柱を一気通貫して研究できるという、国内でも稀有な環境の構築を進めています。その実現には、地域の未来についてのビジョンをあらゆるステークホルダーと共有し、具体的な連携を進めていくことが不可欠です。
さらに、来年(2024年)4月には、まさに「地域」「未来」「共創」というキーワードを冠した、新たな学士課程の組織「地域未来共創学環(仮称)」を創設することを構想しています。「地域と創り、地域と育てる」をコンセプトとしたこの学環では、教育課程の点検?改善を地域の企業、自治体、高等学校等教育関係者などと一緒に行います。また、学生が企業や自治体において有給で働きながら、大学との往還の中で学び、さまざまな課題解決を図るという「コーオプ教育」を採り入れるなど、大学の教育?研究と地域課題の解決とをシームレスにつなぐ新たな取り組みに挑みます。
繰り返しになりますが、これらの新しい歩みも、私たちの目の前に広がる未来をともに描き、共創するという、地域社会から茨城大学へ託された使命を果たそうというものです。
創立75周年?創基150周年という大きな節目を前に、改めて皆様のご理解、ご支援、ご協力を賜りながら、本学として「共創」を力強く進めていければと願っています。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。