水戸でポタリングを 人社「プロジェクト演習」で観光マップを作成
―水戸市の広報紙「広報みと」でもポタリングをナビゲート?
人文社会科学部の開講科目「プロジェクト演習」を履修する「水戸でポタリングプロジェクト」チームのメンバーは、昨年度、水戸市内で観光客や地元市民にポタリングを楽しんでもらおうと、ポタリングコースなどを提案する観光パンフレット「みとちゃり」を作成しました。
「プロジェクト演習」は、人文社会科学部の2年次以上に向けて開講するPBL(Project Based Learning)科目のひとつ。自治体や企業、または履修者自身が提案した課題に対し、1年を通じて取り組みます。履修者は5人以上でひとつのチームを組み、「総合」、「地域連携?地域貢献」、「国際交流?異文化理解」、「PBL型インターンシップ」の4つのカテゴリーから課題を選択。授業は、学内でプロジェクト遂行に必要な知識?技能を学ぶ「一斉授業」と、学外をフィールドに行う「チーム活動」で構成されます。「地域PBL演習」を履修する3年生、「プロジェクト演習(メンター編)」を履修する4年生もチームに加わることで、経験者からのアドバイスを受けることができるのも魅力のひとつです。また、人文社会科学部の専門科目でありながら、他学部、さらには近隣の茨城キリスト教大学、常磐大学の学生も受講可能で、学部?大学を越えた交流も行われているのも特徴です。
この授業の担当者のひとりで、同学部の鈴木敦教授は「このプロジェクト演習は、社会人を疑似体験しようというコンセプト。たとえば会社では、年齢もバックグラウンドも違う人たちが集まっていて、そういった社会のミニチュア版を味わえる」といいます。また、今年度からプロジェクト演習を履修している沼田真歩さん(3年)も「コミュニケーション力を高めたり、学外の方々とのやりとりをする経験ができたりと、これから社会人になるにあたって必要な力を身に付けられると思った」と履修のきっかけを話します。
昨年度は4つのチームが活動。そのうち、水戸市交通政策課から提示された「水戸市の自転車環境をよくするには?」という課題に、「ポタリング」というワードに注目して取り組んだ「水戸でポタリングプロジェクト(MPP)」チームは、観光客や市民向けに、水戸市内で楽しめるポタリングコースを提案するパンフレット「みとちゃり」を作成しました。
「ポタリング」とは、自転車で散歩するようにゆっくりと走ること。"がんばらないサイクリング"です。水戸市は、まちなかを巡りやすくすることや、バスを降りた後の移動手段を設ける目的でシェアサイクル(愛称:みとちゃり)の整備を進めており、観光客や市民が自転車で街を楽しめるようなアイデアを、「プロジェクト演習」を履修する学生たちに求めました。
昨年度からプロジェクトに参加している関悠花さん(3年)は「大学の付近では自転車によく乗るが、水戸駅に近いところでは自転車を使ったことはこれまでなかった。大学入学をきっかけに水戸に来て、交通など不便だなと思ったことを少しでも改善できればと思った。水戸市のレンタサイクルを活用して、市内のいろいろなところを回って楽しむきっかけになれば」という思いで、この課題に取り組むことを決めたといいます。
昨年度はこの課題に5名のメンバーが取り組みました。実際に市内を試走して作成したパンフレットは、観光客向けと、主に市民向けの朝活に特化したものの2種。観光客向けパンフには、「徳川ゆかりの地巡り」、「水戸の御朱印巡り」、「水戸の四季巡り」、「芸術の美戸巡り」といった目的別の4つのコースを掲載し、それぞれのスポットを写真を交えて紹介しているほか、駐輪場所や営業時間も記載しており、丁寧に取材をしたことがうかがえます。また、コースの途中で休憩できる飲食店などもマップにまとめられており、どこに寄り道しようか考えるのも楽しい仕掛けが盛り込まれています。
また、「みとちゃり For Morning」と題した市民向けパンフレットは、「朝活」がテーマ。早朝からオープンしている市場や、普段は見逃してしまいそうな景色などを紹介し、市民や茨大生らに向けたポタリングでの朝活を提案しています。
関さんは「取材先にアポをとるという経験は初めて。取材交渉にはSNSを利用するなどの工夫もした。日程が合わず、取材を見送らざるを得ないこともあった」と、取材時の苦労を話します。また、パンフレットのデザインを手がけた小林千紗さん(3年)は「水戸が歴史の街であることを、色味や渋さで表現したかった。印刷会社やデザイナーさんの手はほとんど入っておらず、パワーポイントなどで地道に作成したもの。手作り感もありながら、クオリティの高いものを作れたと思っている」と振り返ります。さらに、昨年プロジェクトリーダーを務めた臼井柚里さん(4年、パンフ作成当時は3年)がExcelで作成したというマップにも注目してほしいと力を込めました。
この「水戸でポタリングプロジェクト」は、新たなメンバーを迎えて今年度も継続して活動しています。そんな中、水戸市から「市報でポタリングやシェアサイクルを紹介してくれないか」という打診があり、水戸市の市報「広報みと」(2023年6月1日発行)の特集「みとちゃりはじめました」にプロジェクトメンバーが出演。市のレンタサイクルを利用して、街中を巡った様子が掲載されました。
今年度からメンバーに加わった沼田さんは「電動自転車に初めて乗ったが、電動アシスト付きなので坂道も楽にのぼれた。今回の試走で、自転車の交通ルールを改めて知ることができた。他の利用者にも理解してもらって安全性の確保にもつながるといい」と、試走の感想を述べました。
また、同じく新メンバーの渡邊壮梧さん(2年)も「電動アシストのおかげで負荷なく走れた。専用のアプリで自転車を予約したり開錠したりする仕組みだが、そこまで難しくなく使いやすかった」と話しました。
今年度、水戸市交通政策課から提示されたのは「シェアサイクル『みとちゃり』をPRしてほしい」という課題。メンバーは、「みとちゃり」を宣伝するポスターを作成するなど、多くの市民、観光客にこの取り組みを知ってもらうための活動のほか、昨年度から運用しているTwitterやInstagramなどのSNSを使った情報発信や、動画の作成などにも力を入れていきたいということです。
プロジェクトで作成したパンフレット「みとちゃり」は、人文社会科学部講義棟と万博manbetx官网図書館でお手に取っていただけます。
プロジェクトの今後の活動にもぜひご注目ください。
(取材?構成:茨城大学広報室、撮影協力:茨大広報学生プロジェクト 朝倉久瑠美(人社1年))