茨城でみる多様性ー常総?つくばを旅した1日
「日本語研修コース」を受講する本学留学生、日本語教員養成プログラムを受講する本学学生と、県立勝田中等教育学校の中学生が、茨城県内の多様性を理解するためのフィールドトリップとして、常総市とつくば市を訪れました。茨大広報学生プロジェクトの永島彰人さんによるレポートです。
12月13日、茨城県内の多様性を理解するためのフィールドトリップが行われました。このフィールドトリップは、留学生に向けて開講される「日本語研修コースレベル4(総合)」の授業、また茨城県立勝田中等教育学校と連携して行っているプロジェクト活動(多様な背景を持つ子どもたちが集う理想的な中学校について考えるプロジェクト)の一環として実施されました。今回の訪問には、茨城大学の留学生、勝田中等教育学校の中学生のほか、日本語教員養成のプログラムを受講する本学の学生3名も参加しました。
万博manbetx官网からバスに揺られ、最初の目的地「亀仙人街」に到着です。亀仙人街はスリランカやフィリピン、タイなどのお店が並んでいます。そこで出迎えてくださったのは、しもつま外国人支援ネットワークTOMODACHI代表の小笠原紀子さんです。小笠原さんには、亀仙人街や周辺にあるお店について紹介していただきました。ここで勝田中等教育学校のみなさんとも合流し、2つのグループに分かれて行動します。
1つのグループはまず、亀仙人街の1階にあるレストランランディワでスリランカカレーをいただきます。お皿の真ん中に細長いご飯をよそい、その周りにカレーや他の料理を盛りつけるのが基本の配置です。カレーは、カレーリーフをはじめスパイスが豊かに用いられ、チキンやポーク、レンズ豆とさまざまな種類があります。スリランカカレーを満喫したい方は、ご飯とカレーを右手で混ぜ合わせ口へ運ぶのがオススメとのこと。
スリランカの公用語であるシンハラ語を交えた解説では、「サライ(辛い)ほどラサイ(美味しい)」とありましたが、今回は普段よりも辛さをひかえめにしてご提供いただきました。しかし、それでも「ちょっと辛い」という感想も。サラダやスープで箸休めです。飲み物でも辛さを和らげられます。季節を問わず温かく甘いジンジャーティーもその1つです。食後のデザートにはワタラッパン、スパイスとココナッツが香るスリランカのプリンです。「チャイを食べているみたいな感じ」と的確な食レポが出ました。
一方その頃、もう1つのグループはスリ?サンブッダローカ寺を訪問。寺院についての解説を受けました。この寺院は2010年10月21日、日本にいるスリランカ人たちの手で開かれました。スリランカから絵師を招き、装飾を施したほか、2016年には大仏が建立され、日本の家屋に囲まれる中でもスリランカ寺院としての趣が漂います。2016年12月に開催された大仏お披露目式典は、宗派の要人や後のスリランカ大統領が出席しました。
また、寺院ではあるものの神を祀る社も存在します。社にはシンハラ語で「4体の神がいる社」と書かれているそうですが、実際には5体いるそうです。他にも菩提樹や鐘の紹介をしていただきました。
寺院に「トウガラシが植えられている理由」を尋ねられ、「前はお花を植えていたが、トウガラシであれば訪れた人に渡せるから」と住職が答える一幕もありました。同じく寺院内に植えられているパパイヤの実を渡すこともあるそうです。
この後、2つのグループが入れ替わり、双方が食事と寺院訪問を終えて合流すると次なる目的地、常総市立水海道中学校へ向かいます。水海道中学校では、茨城県内の公立校で初めて設置された夜間学級について説明を伺いました。
夜間学級においては「夢を応援する学校」の具現化を目指し、夜間学級ならではの多様な年齢構成や職業、国籍をいかしながら、生徒一人一人の学習状況に応じた実践的なキャリア教育が行われています。在籍する生徒は、1年生10人、2年生7人、3年生10人で、国籍はパキスタン人が11人と最も多く、次いで日本人、フィリピン人、アフガニスタン人など。最近は、中学2~3年生の年齢で来日した生徒が多く通う傾向にあり、年代別では10代の生徒が17人と半数以上を占めています。
また水海道中学校は、昼間の学級でも生徒の約20%以上が日本国外出身の親をもち、転校生が来るとの知らせを受けると、「今度はどこの国から?」と尋ねる生徒もいるそうです。
夜間学級の行事は、運動会をアレンジしたスポーツフェスティバルや、昼間に開催されるため事前に収録したビデオでの参加となりますが、合唱コンクールが行われます。加えて校外での活動も実施されており、こうした機会を通じて生徒の学びや夢を実現すべく、専任の教職員19人と校長が生徒と向き合っています。
水海道中学校の訪問を終え、最後に訪れたのは多国籍雑貨店「TK Store」です。約20年前、元々はブラジル人向けのお店として始まりました。今では、ブラジル人だけでなくアジア各国から日本へ来た方々も利用しています。また、関東鉄道常総線の水海道駅前にあるという、食材を買い求めに来る方にとっても嬉しい立地です。
さて、買い物状況をみていきましょう。ベトナムからの留学生は、ヌクマム(ベトナムの魚醤)をみつけ、早速カゴに入れています。中学生たちは、パンとインカコーラを手にしている姿が目立ちます。その中で、ブラジル産のソフトキャンディーを選んだ方に理由を尋ねると、「以前食べたことがあり、今回買おうと思った」そうです。このソフトキャンディーとは縁があるのかもしれません。
こうして買い物を済ませたところで、この日の全行程を終えました。食や宗教、教育など複数の視点から多様な世界を体験した今回のフィールドトリップ。今後は1月24日の発表に向けて、留学生と中学生がグループを組み、議論を重ねます。フィールドトリップでの学びは、どのような形で「多様な背景を持つ子どもたちが集う理想的な中学校」についての発表につながるでしょうか。
(取材?構成:茨大広報学生プロジェクト 永島彰人(人社3年))