BtoBの企業ってどんなところ?1年生たちが理解深める
―茨城大学卒業生が社長を務める部品販売大手?ミスミグループ本社によるレクチャー
「BtoC」「BtoB」という言葉、学生のみなさんは知っていますか?
これはビジネスの対象に分けて企業や事業を分類する表現。「BtoC」は「Business to Consumer」、すなわちみなさんのような消費者向けのビジネスでのことで、「Business to Business」を意味する「BtoB」は企業間の取引を指す言葉です(ちなみに「メルカリ」のように消費者間で取引される形態は「CtoC」とも呼ばれます)。
?BtoCの場合は、一般消費者をターゲットとしているため、テレビCMなどを通じて耳なじみのある企業が多くあります。
一方、企業向けのビジネスを行っているBtoBの存在は、消費者からはなかなか見えません。BtoBの企業の採用担当者からは「BtoBの企業は業績は良くても知名度が低いので、学生やその家族のみなさんになかなか認知してもらえず、採用には苦労します」という声もよく聞かれます。
そこで、主に1年生向けの「経営学概論」という基盤科目の授業では、BtoBの企業についての理解を深めるべく、1月26日、特別授業として、BtoBの部品販売大手の株式会社ミスミグループ本社からゲストを招き、たっぷりと話を聞きました。
ミスミグループ本社は1963年設立。売上高(グループ直結)は3700億円を超え、従業員数は世界で11,804名とのこと。主な事業は、製造業で使われる部品のインターネット販売(EC)。そのWEBサイトは17の言語で展開しており、取引先は世界で32万社に上ります。商品点数は3000万点、総バリエーションは800垓(8の後ろに0が22個!)という、まさに天文学的な数字です。
そして何より、このミスミグループ本社と茨城大学には大切なつながりがあります。実は同社の代表取締役社長である大野龍隆さんは、茨城大学人文学部の卒業生なのです(本記事の最後では、大野社長から茨城大学の学生たちへのメッセージもご紹介します)。
さて、講義を行った人材開発室ジェネラルマネジャーの香川大治さんによれば、「ミスミグループ本社が提供するのは、顧客時間価値の創出です」とのこと。
これは、見積から納品までをきわめてスピーディーにこなし、それによって製造業における時間コストの削減=顧客が他のビジネス等に利用できる「時間」の創出に成功しているということです。
たとえば、ミスミグループのサービスを利用しない場合、メールやFAXで調達したい部品メーカーに個別連絡をして部品を調達しようとすると、納品まで2~4週間ぐらいかかることが一般的だといいます。一方、ミスミグループのECサイトのカタログをもとに注文すると、納期は1~2日まで縮減できるとのこと。これは確かに大きな違いです。
ミスミグループが大幅な納期短縮を実現できているのはなぜか。秘密は「半製品」の大量ストックにあると、香川さんは教えてくれました。すなわち、注文が来てゼロから部品を用意するのではなく、部品をある程度組み立てておいた平準的な「半製品」状態のものを多数用意しておくことで、調達を早めることができるのです。「半製品の在庫をたくさん持っていることはリスクにつながるので、小規模のメーカーには難しいんです。私たちの場合はベトナムに半製品の製造拠点を持っており、それによって対応できているのです」と香川さんは語ります。
加えて、「meviy」という独自のデジタルツールも開発。CADで作られた設計図面をアップロードするとすぐに見積りが出てくるというもので、これも「顧客時間の創出」に大きく貢献しています。
こうした話を聞くと、普段は縁遠く感じられるBtoBの企業にも興味が湧いてくるのではないでしょうか。そこで香川さんは、BtoB企業とBtoC企業のそれぞれの強み、弱みとなるポイントを紹介しました。
BtoBのビジネスの特徴を、香川さんは「完成品から距離が遠い小さなモノほど、顧客のボリュームが大きい」と端的に説明します。さらに、BtoBの方が売れる/売れないのトレンドを読みやすく、マーケティングや意思決定、効率的な仕組みづくりも比較的やりやすいと言います。
「BtoCの場合、消費者があまりに多くて、どこにヒットしているかをつかみづらいですし、『不特定多数』の方へのヒアリングはなかなかできません。一方で、BtoBの場合は顧客が企業なので、購入者に直接話を聞くこともできますから、潮流をつかみやすいんです」と香川さん。
一方で冒頭でも書いたように、一般消費者が認知する機会が少なく、「売り」が伝わりづらいのがBtoBの企業です。そのため、採用活動に向けて、最近はBtoB企業も積極的にテレビCMなどを利用して認知度向上を図っているそうです。
BtoBに関するこうした話に、1年生の学生たちも興味をもった様子。農学部の学生からは、「半製品の在庫をたくさん持っているというが劣化の心配はないのか」「世界のどの地域の売り上げが多いのか」といった質問が出され、授業終了後も「農学部卒業生でも就職できるのか」と尋ねる学生の姿が一人となく見られました。
さて、最後に、茨城大学人文学部の卒業生である、株式会社ミスミグループ本社の大野龍隆代表取締役社長から寄せられた、学生のみなさんへのメッセージです。
これから数年後に社会人になる皆さんに学生のうちに考えてみてほしいことがあります。
それは「皆さんがこの世に生を与え得られた使命とか意味って何だろう」ということです。
今の私は「少しでも世の中を良くして後世に伝えていく」と言うことだと思っています。
その使命や意味や年齢によって、変わっていくもので、社会に出ると「仕事ってこうあるべき」についても使命の実現手段として考えていくことになるでしょう。
ぜひ、現時点での使命や意味を考え、有意義な学生生活を送ってください。
就職活動中の学生のみなさん、気になった方は、ぜひBtoB企業の情報も積極的に探してみてはどうでしょうか。