2024年4月、茨城大学原子科学研究教育センター(RECAS)を開設
―1室+3部門で総合原子科学の確立目指す
茨城大学は、2024年4月1日、原子科学研究教育センター(RECAS:Research and Education Center for Atomic Sciences)を開設します。東海サテライトキャンパスを拠点に、エネルギー技術や原子?物質?生命科学を融合的に推進する「原子科学」の先進的な研究と高度専門人材の育成を進めていきます。
RECASは、2008年設立のフロンティア応用原子科学研究センター(iFRC)を発展的に改組する形で開設するものです。iFRCが担ってきた①中性子や放射光X線等の量子線を活用した物質?材料の開発や計測等の研究?教育に加え、従来本学として取り組んできた研究?教育をもとに、②原子科学をベースにしたより安全な次世代のエネルギーに関連する新たな技術開発、③環境放射線の健康や生命への影響評価に係る取り組みも進め、それぞれ「応用原子科学部門」「次世代革新炉部門」「放射線安全部門」として、分散されていた機能を1か所に集結させます。
さらに、これらの3部門をつなぐとともに、学内外の研究施設群との共同研究や社会?地域との連携、新たなプロジェクトの企画?立案を進める「社会/地域課題共考解決室」を設けます。同室はエネルギー問題に関する社会のニーズの把握?分析や地域コミュニケーションのハブとしての機能を担い、原子科学による社会への貢献のフロント役を果たします。
RECASの拠点は茨城大学東海サテライトキャンパスとし、日本原子力研究開発機構(JAEA)、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、大強度陽子加速器施設J-PARCといった原子科学研究施設が近接する地の利を活かした協働や人事交流を通じて、茨城ならではのオンサイトでの高度な研究?教育を行います。あわせて、学部生及び大学院生を対象とする放射線?原子力の知識?技術を体系的に学ぶ教育プログラムを整備し、将来の原子科学分野を支える研究者?高度技術者の育成に貢献します。
太田寛行学長は、「わが国は今、気候変動やエネルギー危機、地方の人口減少といった課題に直面している。また近接した地域で発生した原発事故の経験を有する茨城の国立大学として、地域社会のニーズの把握?分析とコミュニケーションに取り組みながら、世界有数の原子科学研究機関とともに新たな総合原子科学の確立と、研究者?高度技術者の育成に貢献し、持続可能なエネルギー社会の構築を目指していきたい」と語っています。
茨城大学 原子科学研究教育センター(RECAS)
- 【設立日】2024年4月1日
- 【センター長】岩佐 和晃(原子科学研究教育センター教授?4月1日~)3月31日まではフロンティア応用原子科学研究センター教授
- 【拠点】茨城大学東海サテライトキャンパス(茨城県那珂郡東海村白方162-1(AYA'S LABORATORY量子ビーム研究センター内))
- 【教員数(予定)】教員20人、URA[研究支援高度専門職]2人
- 【組織構成(1室+3部門)】
社会/地域課題共考解決室
次世代革新炉による発電や水素生成技術などを見据え、エネルギー問題に関する社会のニーズを分析し、分野融合、組織横断、施設連携型のプロジェクトを企画?立案する。
応用原子科学部門
茨城大学が独自に推進している量子線科学(中性子?放射光?ミュオン)を主眼とし、量子線先端計測技術の高度化、量子線利用による機能材料創生、量子線による基礎科学を推進する。
次世代革新炉部門
高温ガス炉や核融合といった次世代革新炉などによる安全な原子科学エネルギーの技術革新と利用を対象として、社会実装に向けた関連技術の開発?高度化、および原子科学技術の継承を進める。
放射線安全部門
生命?生体物質への放射線の影響を主な対象とし、放射線の安全利用技術?放射線の測定評価技術?放射線による生命活動の解明技術の向上を目指す。
茨城大学 太田 寛行 学長のメッセージ
このたび茨城大学の新たな研究?教育の拠点として、原子科学研究教育センター(RECAS)を開設します。
茨城県は日本で最初に原子力の火が灯った地であり、加速器施設や研究用原子炉、核融合実験装置など世界有数の原子科学研究施設を有する地域です。この地にあって茨城大学も長年原子科学の研究?教育に積極的に取り組み、原子力発電や量子線科学分野で活躍する人材を輩出してきました。2008年にはフロンティア応用原子科学研究センター(iFRC)を開設し、さらに2016年には大学院理工学研究科に日本で唯一の量子線科学専攻を設置、翌2017年には東海サテライトキャンパスを整備し、数十名の学生が、常時、近隣原子科学研究施設を用いた研究の現場で貴重な経験を積んできました。
わが国は今、気候変動やエネルギー危機、地方の人口減少といった課題に直面しており、その解決を進める上では、革新的なエネルギー技術や産業のイノベーションにつながる原子科学の発展はきわめて重要です。茨城はその点での大きなポテンシャルをもった地といえます。
一方、2011年の東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故は、廃炉や処理水の海洋放出、避難者の支援といった面で、長期にわたる技術的、社会的課題を生じさせています。近接した地域で発生した原発事故の経験を有する茨城という地の地方国立大学として、世界有数の原子科学研究機関とともにこのような課題の解決、およびその先の持続可能なエネルギー社会の実現に向けて研究?教育?社会実践を進めていくことは、当然の責務だと考えています。
この目標を掲げ、学内に分散していた原子科学の研究?教育の資源を一か所に集結させるとともに、地域?社会とのコミュニケーションを担う機能を中心に据えた、新たな拠点としてこのRECASを開設するのです。
「社会/地域課題共考解決室」を通じた地域社会の原子科学に関するフロントとしての役割を充実させ、近隣の原子科学研究機関や自治体との連携を強化するとともに、地域社会のニーズの把握?分析とコミュニケーションに取り組みながら、「応用原子科学」「次世代革新炉」「放射線安全」という3本の柱による研究?教育を推し進めます。それにより、新たな総合原子科学の確立と研究者や高度技術者の育成に貢献し、持続可能なエネルギー社会の構築を目指します。