社会課題解決を目指す女性リーダーのための研修会
「JWLI Bootcamp2024 IBARAKI 」
地域のリーダーシップと協力を促進するための交流会を開催
2024年7月5日(金)土浦市男女共同参画支援センターにて社会課題解決を目指す女性リーダーのための研修会「JWLI Bootcamp 2024 IBARAKI 」の1日目が開催されました。本記事ではその後行われた交流会の様子と取材レポートを茨大広報学生プロジェクトの藤平良江(地域未来共創学環1年)がご紹介します。
「JWLI Bootcamp」は2019年から始まり、今回が6回目、茨城では初めての開催になります。
このプログラムは社会を先取りし、地域やコミュニティの声を代弁し、より良い未来社会を創造するリーダーを育成するプログラムで、土浦市、有限会社モーハウス、NPO法人子連れスタイル推進協会との共催、茨城県、茨城大学の後援のもと開催されました。
主催するのは『フィッシュファミリー財団(Fish Family Foundation)』。1999年に米国マサチューセッツ州ボストン市で厚子?東光?フィッシュ、ラリー?フィッシュ夫妻によって設立され、ボストン地域の移民や低所得者層の若者支援、また、日本における女性リーダー育成の活動を行っています。
本交流会は共催である有限会社モーハウス代表の光畑由佳さんよりご紹介いただき、現在女性リーダーとしてご活躍されている方々のお話をお聞きすることができる貴重な機会だと思い、取材させていただくことになりました。
今回交流会に参加された女性リーダーは50名を超える応募の中から選ばれた16名。交流会では緑色の名札をつけた研修会参加者と赤色の名札を身に着けたゲストの方が懇談しました。今回の交流会にあたり、主催のフィッシュファミリー財団JWLI代表の澤目梢さんは「参加者の方が新しい仲間やネットワークを得るきっかけの場にして、ゲストの方も一緒に巻き込まれてほしい。そして交流会で出会った方とコラボレーションをして社会課題や地域の課題の解決につなげてほしい」とおっしゃっていました。
会場は活力に満ち溢れた女性たちであふれ、参加者同士の交流はもちろん、ゲストと参加者が積極的に交流している姿が多くみられました。交流会の最中、会場前方では、全員がマイクで自身の活動や今回の研修会への意気込み、感想などを話し、一方、その間にも会場では名刺交換と交流が行われていました。
参加者の中には子育て支援、生活困窮者の方の支援、ジェンダー平等推進のための取り組みや地域活性化の取り組みなど様々な活動を行っている方がいらっしゃいました。
私が会場でインタビューした参加者の方の取り組みをご紹介します。
女性が楽しく働き続けられる組織作り
川端志乃さん
生活協同組合(生協法人)いばらきコープ生活協同組合
川端さんの勤務する「生活協同組合(生協法人)いばらきコープ生活協同組合」では社内の幹部で女性の方が500人中12,3人と少なく、女性が意見を言いづらいと思うことがあるそうです。
川端さん自身、「合理的な意見を重視する男性幹部が多い職場ではやりたいと思ったことをすぐに聞き入れてもらうのが難しい」と女性が少ない職場の大変さを感じているそうです。しかし、今回の研修会を通して女性たちのパワーをとても感じられたといい、自身の職場をたくさんの女性がイキイキと働ける魅力ある職場にしたいとの思いを語られました。
川端さんのように女性のことを理解してくれる女性幹部の方が職場にいらっしゃると、職場で働く女性の方にとってはとても心強いと感じると思います。そして、女性が働きやすい職場が今後ますます増え、女性のキャリアアップにつながる社会になればと思います。
選択的夫婦別姓法制化、ジェンダー平等推進
井田菜穂さん
一般社団法人あすには
選択的夫婦別姓が認められていない日本で、結婚する際に苗字を変更するかしないか選択できる選択的夫婦別姓を実現するため井田さんは「一般社団法人 あすには」代表理事として2025年法改正を目標に様々な取り組みを行っています。
井田さん自身も会社を作る際旧姓が使えず苦しんだ経験があるそうです。また、たとえば研究職の方の場合、発表した論文の著者名が変わってしまうことで業績を評価してもらえない可能性もあるなど夫婦同姓制度がキャリアを阻害してしまうことがあるそうです。井田さんは「活動を通して同じ問題意識や痛みを持つ女性の方々との「シスターフッド」(女性同士の連携や絆を表す言葉)でジェンダー不平等をなくしたい」と語りました。
お話させていただいたなかで、女性差別撤廃条約を批准している日本政府に対し、国連は女性が婚姻前の姓を保持することを可能にする法整備を3回も勧告していて、女性が婚姻前の姓を保持できないことは女性差別に当たるという見方があることを初めて知りました。将来の女性たちのキャリアを保持していくためにも選択的夫婦別姓制度の導入について考えていかなければいけないと思いました。
人と人、人と大地、市民と行政などがつながる支援
平方亜弥子さん
NPO法人つながりつながる研究所
平方さんは一箱本棚オーナー制度の私営図書館「つながる図書館」を運営しています。つながる図書館は人と人、人と大地がつながって、多様な他者との交流の中から、自分のやりたいこと、心躍ることを知り、やりたいことのある人が実現できるように助け、助けられ、一人ひとりが、より安心して心豊かに暮らし、その豊かさが未来世代にまでつながってゆくよう、共に考え行動できるような場を作りたいという思いから作られました。実際に歯科医院を平方さん自らもリノベーションに参加して協力者の皆さんと作られた図書館は開館までに延べ400人以上の人の貢献があったそうです。現在本棚オーナーは80人程度。図書館の近所の方からハワイの方まで広範な地域にオーナーがおり、本棚は公序良俗の範囲内でどのように使ってもいいということです。本棚にはおすすめの本や、自作の本、自作CDなど様々なものが置かれています。平方さんは、「所有者が県外にいる太陽光発電パネルが地域の里山に増えている。しかしその太陽光発電パネルは地元にメリットがないという問題を解決するために、今後は地域に還元できる太陽光発電パネルの運用法を構想している。」と語りました。
図書館を通してコミュニティができ、そこでできたコミュニティを通して自分がやりたいことや誰かがやりたいことを一緒に考え、実行することができる。そのような仕組みがとてもすてきだと思いました。コロナの時代を経て人とのつながり方が少し変わってしまった世の中ではありますが、本棚を通して、図書館を通して、コミュニティを通して、多様なつながりで縁を結んでいける世の中になればと思いました。
「認知症予防」「発達障害?ひきこもり対策」「地域の活性化事業」
宇野則子さん
NPO法人ファーストペンギンネットワーク
宇野さんは乳幼児?小中高?子育てママから高齢者までのすべての世代の「つながり」を大切にしたいという想いから、「NPO法人ファーストペンギンネットワーク」代表理事として「人と人を繋ぐ」「人と地域を繋ぐ」「人と企業を繋ぐ」「人と企業を繋ぐ」を目的に乳幼児から後期高齢者の方々まで世代間を超えた活動を展開されています。ファーストペンギンネットワークにおいて取り組んでいる人口問題の課題解決の一つに婚姻や出生率の取り組みがあり、婚活活動と産後ケア事業を展開されていたとのことです。(現在産後ケア活動は行われていないそうです。)今回のセミナーには子育て支援事業の一環の教育教室で以来のお付き合いである共催の光畑さんのフェイスブックを見て参加されたとのことでした。
宇野さんは後ほどインタビューにおいて「多彩な講師陣と、地域での課題問題解決のために自ら立ち上がり、コミュニティを拡大しながら真摯に活動している女性リーダーの皆さんとの学び合いと交流はかなり刺激的だった。「井の中の蛙大海を知らず」という言葉が常に脳裏の片隅にあるが、そのことを「ガツン」と感じた。ここで得た学び、いただいた言葉、感じ取った内容、イメージ化させてできた事柄、今はそれらが脳内をぐるぐると蠢いていて、現実でピンとつながる事柄もある。メンバー?スタッフにこの学びと気づきをフィードバックしながら自分たちらしく前進していきたい」と研修会の感想を述べました。
人口に関する問題が大きな課題と言われている日本において、未来を担う子どもたちは宝であり、子育て世代へのサポートは重要です。また、人生100年時代と言われるこの時代に高齢者の健康寿命を延ばすことは長い人生を楽しむために絶対に必要なことだと思います。したがって、ファーストペンギンネットワークの皆さんの幅広い世代に向けたサービスは大切だと思います。そして、将来人口が減少するといわれている日本社会で地域社会が存続していくためには人と人とのつながりを大切にしてきたいと思いました。
交流を通して意見を交換し合ったり、新しい学びを得たり、ビジネスのヒントを得たりするなど、参加していたすべての方にとって有意義な時間になった交流会であったと思います。皆さん時間ギリギリまでお話が尽きない様子が印象的でした。
研修会の3日目に行われる発表会では、3名の参加者が10月24日(木)のVenture Café Tokyoのイベントで発表する権利を、さらに別の3名が10月18日(金)のTSUKUBA CONN?CTのイベントで発表する機会を獲得します。参加者の皆さんの今後の活躍に期待です。
今回のイベントを通して社会問題や地域問題について知るとともに、社会課題解決のために活躍される女性リーダーの方々のお話を聞くことができ、勉強になることも多かったです。また、皆さんそれぞれ自分の行動に信念を持たれている方ばかりで、自分の力で目標達成を実現するという意気込みが感じられて、私もゆるぎない信念をもって行動していきたいと思いました。
末尾にはなりますが、インタビュー取材にご協力くださった澤目梢様、井田菜穂様、宇野則子様、川端志乃様、小林かおり様、清水直美様、菅原亜都子様、幅崎麻紀子様、平方亜弥子様、そして、本取材にご協力くださったすべての皆様にお礼を申し上げます。
(取材:藤平良江(地域未来共創学環1年)※茨大広報学生プロジェクト )