茨城県内企業で働く女性技術者と交流!
女子中高生向けバスツアーの様子をレポート
茨城県内の女子中学生?高校生たちが、県内企業で活躍している女性技術者のもとを訪れて見学?交流するバスツアーが開催されました。工学部が取り組む「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」の一環です。ツアーは7~8月に4回実施されました。8月7日の様子をレポートします。
「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」では、県内で学ぶ女子中高生の理工系分野への興味?関心を高め、地元企業で技術者として働くことの誇りや喜びを伝えるため、さまざまな取り組みを行っています。この「夏休み企業見学バスツアー」は、中高生のロールモデルとなる女性技術者の職場を見学し、交流する機会を提供する企画で、2023年度にスタートしました(昨年の様子はこちら)。
この日のツアーには、16人の女子中高生が参加。朝8時30分に日立駅に集合し、非鉄金属大手?JX金属の磯原工場と日立事業所を訪れました。
JX金属は銅をはじめとする非鉄金属の製造?販売などを手掛けています。日立鉱山にルーツがあり、日立市とゆかりの深い会社です。23年7月、「茨城で学び、働き、暮らす」人材をともに育てることを目的に、工学部と包括連携協定を締結しました。
午前は磯原工場へ。「世界最大のスパッタリングターゲット工場」と言われるだけあって、敷地は広大。なんと東京ドーム5個分の面積があるそうです。十数棟の建屋があり、そのすべてが屋内でつながっています。
スパッタリングターゲットとは、金属などを薄膜に仕上げるための素材です。JX金属磯原工場で作られる半導体用スパッタリングターゲットは品質が良く、世界シェア6割を誇っています。工場の説明をしてくださった総務部の布施香南さんは「素材の加工技術などの進化が、製品?産業の発展に直結するという『素材の可能性』を感じて欲しい」と語りました。
説明後はヘルメットと作業着に着替え、スパッタリングターゲットの実物を見ながら加工の工程などについて解説してもらいました。その後屋上から敷地を見渡し、工場内に移動。スパッタリングターゲットの完成品を目視や機械で検査する様子、クリーンルームでの梱包の様子などを見学しました。
さて、磯原工場での見学を終え、一行は日立市十王町のイタリアンレストラン「ストーンビーチ」へ移動。おしゃれなランチが付いていることも、このツアーのポイントです。参加者の皆さんはピザやパスタをほおばりながら、"推し"のアイドルや恋の話に花を咲かせました。こうした学校や年齢を超えた交流もツアーの魅力と言えます。
午後は日立事業所へ。ここでもヘルメットや作業着を身に付け、製造現場を見学します。「銅箔製造部」や「技術開発センター」を訪れ、神奈川県の倉見工場で作られた銅箔の表面にめっき処理をする工程や、新素材を開発する様子などを見せてもらいました。
見学から戻り、いよいよツアーのメインイベント。女性技術者との交流の時間です。
技術開発センターの中島美優さんは中高と一貫して理科、数学が得意でした。「化学を学べば世界の全てが分かるのでは」と思っていたそうです。英語がずっと苦手でしたが、大好きな化学の論文なら英語でも読めると気付き、大学院時代はアメリカで学会発表まで行いました。現在は育児との両立のため、週3日出勤、週2日在宅を基本とし時短勤務しており、働きやすさをアピールしました。未来の後輩たちに向け、「自分で悩んだ進路なら納得して頑張れる。自分で決めることが大事」とエールを送りました。
銅箔製造部の芳賀美紀さんは、「やりたいことが思いつかないなら理系を選んでみては」と提案します。芳賀さんの高校時代の得意科目は国語、社会、英語。しかし、「面白そうだから」と大学では材料工学を学びました。就職し、教科書で学んだ内容を実際に使えることや、自分が作ったものが世界中で使われている事実に興奮したと言います。「学校の勉強でよく分からなくても、仕事で使うと徐々に分かってくる。得意じゃなくてもどうにでもなる」と話しました。
その後の交流会では、今興味があることや好きな理科の授業などの話で盛り上がりました。
ツアーでは、JX金属のほか、神戸工業試験場、鈴縫工業、三友製作所、野上技研、日立建機、SMCの皆さまにご協力いただき、交流、見学を行いました。
参加者の皆さま、協力企業の皆さま、ありがとうございました。
(取材?構成:茨城大学広報?アウトリーチ支援室)