【佐月実さん】茨大生?教職員が選ぶ!わたしの推本
―生協学生委員会が茨城大学OB?小説家の佐月実さんにインタビュー
茨城大学生活協同組合書籍部と生協学生委員会(GI)では、今の学生生活の実態を正しく捉え直し、もっと書籍部へ足を運びたくなるような取組みとして、おすすめ書籍「#推本」企画を実施しています。
今回は特別編として茨城大学OBで小説家の佐月実さんにインタビューしました。
佐月さんの著書
佐月さんの推本
- 河野裕 著 『さよならがまだ喉につかえていた(サクラダリセット4)』(KADOKAWA 2016)
河野裕先生の作品が大好きでほかにもいろいろ読んでいますが、特にこの『サクラダリセット』シリーズが好きです。今回紹介した4巻は短編集になっていて、特別収録の書き下ろし『ホワイトパズル』が1番印象的で好きな物語です。河野先生の良さが存分に出ている物語だと思います。ずっと推している本です。4巻は短編集で『サクラダリセット』を読んだことがない人でも読みやすいのではないかと思うので、ぜひ読んでほしいです。
- 神永学 著 『ラザロの迷宮』(新潮社 2023)
- 岡崎琢磨 著 『鏡の国』(PHP研究所 2023)
二つとも最近読んだ小説で印象的だった作品です。『ラザロの迷宮』は正統派ミステリー、『鏡の国』はミステリー以外の魅力も感じられる読み物として完成度が高い作品です。
佐月さんの大学生時代や作家業、著書についてお聞きしました。
Q.佐月さんのこれまでの経歴を教えてください。
水戸桜ノ牧高校出身で茨城大学理学部を卒業しました。その後茨城県庁へ入庁しました。県庁を2年で退職し、現在は小説家として活動しています。
Q.理学部から進路を決める際に大切にした心構えはありましたか。
小説を書く時間を確保するために、定時出勤?定時退勤が可能な公務員を目指し入庁することにしました。しかし、仕事をしながら小説を書き続けることは難しく、退職することを決めました。私は小説を書くことを第一優先にすべて決めていました。夢を追いかけ続けたとかっこいい言葉をいうわけではないですが、今思えば目の前のことに一生懸命に取り組んでいたのだと思います。心構えとはまた違うかもしれませんが、「好きなことを追いかけていった」結果だと思います。
Q.佐月さんはどのような大学生でしたか。
大学は小説を書くために通っていたところが強くありました。高校生のときにバンド活動をしていたためバンドサークルなどにも興味がありましたが、結局所属はせず勉強をしながら小説を書いていました。大学生になって悩みが多くなり、休学をして小説を書いていた時期もありました。決して順風満帆ではなかったように感じます。
Q.小説を書き始めたきっかけはなんですか。
きっかけは小学校3年生の頃です。担任の先生が毎週末に日記を課す先生で、その日記が先生方に好評だったようで教室に貼り出される機会が多く、それがうれしくてそこから文章を書くことにつながりました。
佐月さんの作品と作家業
Q.「ミナヅキトウカ」のモデルはいますか。
モデルはいないです。小説の登場人物には基本的にモデルはいません。唯一主人公は私自身だと思うのですが無意識に描いているものなので。「ミナヅキトウカ」は言うなれば「理想のヒロイン」なんです。強くて芯の通った女性に惹かれるので、僕の好みが詰まっていると思います。実際に「ミナヅキトウカ」のような女性がいたら友達になりたいけどあまりお近づきにはなりたくないですね(笑)
でも、モデルと言ってはなんですが同じ学科の天才と呼んでいた友人はかなり人物像に影響を与えていたと思います。その人は物事を0か100かでしか判断しないというか。夏休みになっても実家に帰らなかったんですよ。実家って家賃も光熱費もタダじゃないですか。ひとり暮らしと比べても電車賃しか費用がかからないのに帰ろうとしなくて。でも話を聞いたら、「実家に帰ったときの衝撃度が違う。2年に1回とか4年に1回とか帰ればたくさんお小遣い貰えるかもしれない」と言うんです。それを聞いて、彼は自分にとってどの選択が得なのか考えているのだなと思ったんです。目の前のことよりも先のことを考えて自分にとって得なのか、数値的に考えているということを教えてくれて、そういった考え方は影響を受けています。「ミナヅキトウカ」のはっきりしている性格は彼の影響なのかなと思います。
Q.小説に出てくる大学も茨城大学がモデルですか。
茨城大学です。執筆当時はまだ大学生だったので茨城大学を舞台にしたんだと思います(笑)小説中の大学の成績の付け方も茨大がモデルです。
Q.本のタイトルにもある「思考実験」には前から興味があったのですか。
思考実験がずっと好きだったわけではなくて、本当に何も浮かばなくなったときにYouTubeを見ることがあって。よびのりさんというYouTuberの動画で、ちょくちょく思考実験の話をしているのを見たんです。思考実験の理系的なものをしているのを聞いて、「面白いな」と感じて、塾で指導を担当していた高校生に思考実験の話をしていました。彼はとても優秀で、予定の講義時間よりも早めに課題が終わることが多かったから余った時間に。そこでふと小説としてかけそうな題材かも...と思いました。元々思考実験に興味があったわけではなくて、たまたま偶然が重なって生まれたものだと思います。
Q.小説を執筆していくなかで大切にしていることや心構えはありますか。
僕が1番大事にしていることは、ちゃんと自分が楽しむことですかね。苦しいときに書いたものって苦しいんですよ。読んでいる側も苦しいし。筆がのっているときって自分が楽しんでいるんですよね。「このセリフめっちゃいいぞ」とか「この先の展開めっちゃいいぞ」と心を持ちながら軽やかに筆が取れると最高のものができるのですが、どこかで力んだり煮詰まったりすると苦しい文章になってしまいます。「自分がなにより楽しむこと」を大切にしています。
Q.茨大生に向けてひとことお願いします。
いろいろな人と出会っていろいろな経験をしてほしいです。そのつながりがどのようにつながっていくかは分かりません。今日のこのインタビューも本当に不思議な縁で決まったものですし。いまのうちにいろいろな経験をしておくべきだと思います。それは絶対に損になりません。
佐月さんの著書『ミナヅキトウカの思考実験』と、実際に佐月さんが選ばれた"推本"については、生協書籍部にて紹介されています。
あわせて茨城ゆかりの作家作品コーナーも展開中です。是非いらっしゃってください!
また、2024年11月10日(日)の茨苑祭にて開催されるホームカミングデーでは、佐月さんのミニ講演会を実施予定です。詳しくは茨城大学のホームページをご覧ください。
(取材?構成:生協学生委員会 長峰 莉希(人文社会科学部4年) 長谷川 瑞起(理学部3年))