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茨大との連携に注目
日立市かみね動物園?千葉市動物公園が「エンリッチメント大賞2024正田賞」受賞

 茨城大学と日立市かみね動物園、千葉市動物公園の3機関が連携して研究?教育活動に取り組んでいる「ZOO SCIENCE HUB ZSH)」プロジェクト(https://dklabo.wixsite.com/izsh)。学術紀要発行などの積極的な活動が評価され、このたび両動物園が「エンリッチメント大賞2024 正田賞」という賞を受賞しました。取組みを進めてきた農学部附属国際フィールド農学センターの小針大助准教授に話を聞きます。

20241023_zoo_1.jpg 2024年4月、日立市かみね動物園にて

―特定非営利活動法人市民ZOOネットワーク主催の「エンリッチメント大賞」ということですが、「エンリッチメント」とは?

小針「動物園に限った話ではありませんが、動物がいきいきと生活できるような豊か(リッチ)な飼育環境づくりや、それに伴って生物学的機能の促進が図られるような取組みを総称して「(環境)エンリッチメント」と呼びます。動物園の役割に多様性をもたらすものとして、日本には1990年代に紹介された概念です」

―具体的にはどんな取組みが?

小針「5つの観点がよく示されます。エサに関する「摂食エンリッチメント」、生活空間に関する「空間エンリッチメント」、仲間についての「社会的エンリッチメント」、動物の認知能力を惹起する「認知エンリッチメント」、そして視覚?聴覚?嗅覚を刺激してあげる「感覚エンリッチメント」です。これらのアプローチを組み合わせて取り組みます」

―「正田賞」とはどういう賞でしょうか?

小針「正田賞は畜産学が専門の正田陽一先生(1927-2016)にちなんだものです。正田先生は茨城大学農学部の教員(1987-1992)を務めていたこともあります。私自身の専門でもあるアニマルウェルフェア(動物福祉)の啓発や市民と連携した優れた取組みを評価する賞です。エンリッチメント賞へのエントリーは自薦によるものが多い中、日立市かみね動物園と千葉市動物公園の取組みはどなたかが他薦してくださったようです。直接的なエンリッチメントの実践ばかりではないのですが、「連携」の取組みを評価していただけたというのは大変嬉しいですね」

―賞の主催団体のコメントに、「『かかりつけの研究機関』としての役割を担う茨城大学が動物園をバックアップしていく連携スタイルで、双方の学びの機能を向上させる共同研究活動を展開しています」という言葉がありました。「かかりつけの研究機関」というのは印象的です。

小針「地域の動物園が地域の大学に対して、かかりつけのお医者さんのような感じで関われるようになると、動物園のサイエンティフィックな側面がもっと強化されていくのではないかと思い、ある学会の招待講演の場で『かかりつけの研究機関』という言葉を使ってみました。その言葉が両動物園との活動を通じて主催団体にも伝わったのかもしれません。動物園と大学との共同研究の話はそれなりに聞きますが、研究課題単位で完結してしまいがちです。ZSHでは、私たちが研究フィールドとして動物園を学生教育に利用するだけではなく、飼育員さんの要望に対して私たちが研究サービスを提供するという関係ができていて、来園者の方への研究成果?教育成果の還元にもつなげています。そうした継続的?包括的な活動がおもしろいと思っていただけたのではないでしょうか」

20241023_zoo_2.jpg 受賞した両動物園をバックアップしてきた小針准教授

―受賞についての受け止めと今後の展望は?

小針「今回受賞したのは動物園であって、本件に関しては、われわれはあくまでバックアップ組織です。そのため、この受賞が、賞の目的である両動物園の活動のさらなるエンカレッジにつながればと思います。また、これをきっかけに動物園と「かかりつけの研究機関」という関係が全国に広がったら嬉しいですね。都市部の大きな動物園とは異なり、国内の多くの地方動物園では教育?研究の専門組織を自前で持つのはなかなか難しい状況にあります。ですから、我々のようにそうした活動を近くの機関が支えるという仕組みが、日本型の動物園研究のスタイルにはフィットするのではないかと考えています。将来、そうした地域の連携同士がネットワーク化されて、さらに国内外との連携へと動物園研究の輪が広がっていくようになったらおもしろいなと思っています」

エンリッチメント大賞2024の表彰式?受賞者講演会は127日に東京大学弥生講堂で行われる予定です。賞についての詳しい情報は、特定非営利活動法人 市民ZOOネットワークのWEBサイト(https://shiminzoo.studio.site/)をご覧ください。