日越大と学生交流の覚書締結、学部生の交流が可能に
―記念セミナーには大勢の卒業生らが参加
茨城大学は10月12日、ベトナムの日越大学(VNU-Vietnam Japan University)と学生交流に関する覚書(MOA)を締結しました。これにより、学部生の交流が可能になります。これまでは、茨城大学が日越大学修士課程の気候変動?開発プログラム(略称:MCCD)の幹事校を務めていることから、大学院生の交流が主体でした。
同月13日には、日越大学ミーディンキャンパスにてMOA締結記念セミナーが行われ、MCCD修了生や新入生など約70人が会場やオンラインで参加しました。
日越大学とは
日越大学は、日本とベトナムの友好関係のシンボルとして、両政府の協力や国際協力機構(JICA)の支援により、ベトナムを代表する国立大学であるベトナム国家大学(VNU)ハノイ校の構成大学として2014年7月に設置が決まり、今年で10周年を迎えました。ベトナムの教育?研究?人材育成拠点としてASEAN諸国や世界で活躍できる人材の輩出に力を入れています。
創立当初は、東京大学が幹事校を務める地域研究プログラムや社会基盤プログラム、筑波大学が幹事校を務める公共政策プログラムなど六つの修士プログラムからスタートしました。
MCCDは、2018年9月、七つ目の修士プログラムとして開講しました。茨城大学は、2006年設立の地球変動適応科学研究機関(Institute for Global Change Adaptation Science、略称:ICAS)、のちの地球?地域環境共創機構(Global and Local Environment Co-creation Institute、略称:GLEC)を中心に、東南アジアなどをフィールドに気候変動や適応策についての研究?教育に長年取り組んでいる実績があり、幹事校を務めることとなりました。MCCD第1期生入学式の際に日越大学と学術交流に関する協定書(MOU)を締結しました。
深刻な海岸侵食などの課題に見舞われているベトナムでは、気候変動や持続可能な開発への関心が高まっています。MCCDでは、ベトナム社会の現状とニーズに適応した文理融合のプログラムを提供し、気候変動に関する原理や影響、持続可能な開発についての学際的な知識?スキルを育て、学生の問題解決能力を養うことを目指しています。
なお、2019年9月に早稲田大学が幹事校を務めるグローバル?リーダーシッププログラム、その後、日本学や先端工学の学部プログラムも開講され、2024年7月に初の学部卒業生も輩出しました。現在は博士課程設立の準備をしています。
MOA締結式
日越大学ホアラックキャンパス近くにあるナショナルイノベーションセンター(NIC)で10月12日、茨城大学と日越大学とのMOA締結式が行われました。
今回のMOA締結により、両大学の学部生が、数週間から1年間、互いの大学で聴講生として、授業料を支払わずに授業を受けることができるようになりました。日越大学では学士課程3年生以降に英語の授業を受けられるほか、日本語や日本文化を研究する日本学があることから、英語に不安のある茨城大学の学生も安心して海外の大学で学ぶことができます。大学間の交流協定のため所属関係なく交流できますが、今後、日越大学学部プログラムのコンピューターサイエンス&エンジニアリング(BCSE)と茨城大学の工学部との間で具体的な学生交流の計画を立てることになっています。
日越大学の古田元夫学長は「気候変動分野で日越大学を支援してくださっている茨城大学の存在は大変心強いです。日本の幹事大学の中で最も効果的な協力者として高く評価しています」とし、MOA締結が「両大学間の学生交流をさらに発展させ、関係が強化することを期待しています」と話しました。
茨城大学の太田寛行学長は「私たちのさらなる連携、協力を促進することを確信しています」と話し、感謝を述べました。
工学部の乾正知学部長は「発展するアジア経済の実態を知ることは、日本の学生にとって大きな刺激になり、彼らの今後のキャリア形成にも良い影響を与えると考えています。また、日本は多くの分野で世界最先端の技術力を有しており、様々な研究施設や企業を見学し日本経済の実態を知っていただくことはベトナムの学生にとっても良い経験になると思います」と双方のメリットを語り、将来的に長期留学やダブルディグリーへ発展していくことを期待しました。
日越大学10周年記念式典?入学式
同日、同所で開かれた日越大学10周年記念式典と入学式には、チュオン?タン?サン元ベトナム国家主席やレ?クアン ベトナム国家大学ハノイ校総長、ブイ?タイン?ソン副首相兼外相らも出席されました。
MOA締結記念セミナー
13日には、日越大学ミーディンキャンパスで茨城大学と日越大学共催のMOA締結記念セミナー「気候にレジリエントな開発のための総合気候変動科学: 日越の教育?研究協力の成果と今後の展望」を開催しました。セミナーには会場、オンライン合計で約70人が参加しました。このうち、約50人がMCCDの卒業生や在学生、新入生です。
セミナーには、日越大学からMCCDダイレクターのマイ?チョン?ニュアン教授やグエン?ティ?ホアン?ハー准教授、茨城大学から太田学長、三村信男名誉教授、田村誠GLEC教授が登壇しました。最後に、MCCDの卒業生を代表してJICAベトナム事務所で働いているディエップさん、茨城大学博士課程に国費留学生として在籍中のオアインさんが、卒業後も気候変動関連の活動に携わっていることを報告しました。閉会挨拶は、日本側ダイレクターである茨城大学の北和之教授が行いました。
セミナーには、VJU日本側理事のモンテ?カセム国際教養大学長、内田勝一早稲田大学名誉教授もご参加いただきました。
セミナー後は、MCCD同窓会を開催しました。2018年度からの7期合わせたMCCD入学者は83人です。在学生、卒業生は、国際協力機構(JICA)ベトナム事務所や国連人間居住計画(UN- Habitat)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、韓国国際協力団(KOICA)、ベトナム天然資源環境省(MONRE)などで活躍しています。また、卒業生のうち14人が文科省の国費留学で来日しているほか、博士号取得のためアメリカやドイツ、ニュージーランド、台湾などの大学へも進学しています。
また、この日、MCCD同窓会の幹事が選出され、同窓会組織が発足しました。同日の同窓会には同窓生の半数近くが参加し、これまで培った人脈と結束力を確認することができました。今後はMCCDの教員や卒業生とのネットワークを活かし、日越の気候変動に関する共同研究を進めていく等、両大学の教育と研究が更に促進されることが期待されています。
(取材?構成:茨城大学広報?アウトリーチ支援室)