農学部とコマツ、実証研究の収穫米17トンを子ども食堂などに寄贈
茨城大学農学部と建設?鉱山機械メーカーのコマツは、農業用ブルドーザーを活用した乾田直播水稲栽培の有効性に関する実証研究を行っています。その研究を通じて収穫された新米は、食の支援を必要とする方々に毎年寄贈しています。今年も17トンのお米を子ども食堂などに寄附しました。
「乾田直播水稲栽培」は、水田にイネの苗を植える一般的な水稲栽培ではなく、イネの種子を直接土に播いて育てる栽培方法です。苗作りや田植えなどのコスト削減につながる方法ですが、圃場面を高精度に均平化する技術が必要となります。
そこで茨城大学農学部とコマツは、ブルドーザーを用いた乾田直播水稲栽培の実証試験を、2020年から稲敷市の大規模圃場で開始しました。コマツの農業用ブルドーザーは、GNSS測量データを用いた高精度ICTによりブレードの高さを自動制御。4ヘクタールの大規模圃場で、直播に必要な高精度な均平を実現することができました。また、後部に農業用アタッチメントを装着することで、耕起作業や種まき作業を行うこともできます。この実証研究には、コマツの販売代理店であるコマツ茨城株式会社/株式会社イバジュウも参画しています。
そして、この実証研究で収穫した新米については、毎年、地域の子ども食堂や学生等に寄贈しています。今年度は「にじのきらめき」という品種のお米、計17トンを寄贈。共同研究を担当している茨城大学農学部の黒田久雄教授によれば、「にじのきらめき」は、種子よりも葉っぱの方が高く育ち、日よけの役割を果たすため、コシヒカリなどと比べても高温に耐えられる品種として注目されているそうです。
10月28日には、阿見町を中心にひとり親家庭の支援や子ども食堂の運営、学生への食糧支援を行っているami seed、社会福祉法人阿見町社会福祉協議会、子ども食堂サポートセンターいばらきのみなさんの出席のもと、茨城大学阿見キャンパスにおいて贈呈式を実施しました。
冒頭、挨拶に立った茨城大学農学部の宮口右二学部長は、「今年はお米の価格が上がり、お米が口に入りにくくなっています。食料の安定供給、自給は国の政策としても大事なことです。コマツ様とともに農業の省力化に取り組むことで、後継者不足の問題の解決にもつなげていきたいです」と話しました。
続いて、コマツ グリーン事業(林業?農業)推進本部の坂井睦哉主幹は、大規模直播の実証研究の取組みをインドネシアでも展開していることを明かし、「食料の安定生産の重要さに加えて、脱炭素の視点も交えながら引き続き産学連携を進めていければ」と抱負を述べました。
その後、コマツの坂井主幹から阿見町社会福祉協議会の湯原勝行さんへ、黒田教授からami seedの林久美子さんへと、それぞれ目録が手渡されました。
阿見町社会福協議会の湯原氏は、「受け取ったお米を町内で活動している子ども食堂や一人暮らしの高齢者などに配っています。今年はお米が高く、古米を安く買ってしのいでいるという声をよく聞きました。今回いただいた新米で、食の楽しみをひとときでも楽しんでほしいと思っています」と語りました。
また、贈呈式に同席したami seedの清水直美代表も、「子ども食堂や無料塾での給食のほか、13市町村の一人親家庭にも食事を提供していますが、今年は本当にお米が足りません。いただいたお米も活用しており本当に助けられています」と話しました。ami seedが11月に実施する「こども食堂クローバー」では、コマツや茨城大学農学部の関係者もボランティアスタッフを務める予定です。
茨城大学農学部とコマツは今後も実証研究や食の支援の活動を継続していきます。