持続可能な社会のための水環境研究:涸沼から太平洋小島嶼まで
- 2022年12月16日
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日本では蛇口をひねればきれいな水が出ます。また、多くの湖や河川では水産業が営まれ、レジャーや観光地としても私たちの生活に潤いを与えてくれます。このように私たちの生活に欠かすことができない水環境は常に自然から恩恵(生態系サービス)を享受して成り立っており、生態系の保全?再生が重要になります。
例えば、茨城県にある関東唯一の汽水湖の涸沼(ひぬま)では、水産資源としてシジミが水揚げされています。シジミは水産資源としてだけではなく、湖内の水質浄化も担っています。地球?地域環境共創機構(GLEC)の藤田昌史教授は、シジミなどの水生生物の生息環境と水生生物が受ける環境ストレスとの関係を評価し、生態系サービスを持続的に享受すべく水環境保全のあり方について研究しています。
また、世界に目を向ければ、生活排水により国土が水没する危機に直面する島国があります。太平洋には海抜2~3m程度のサンゴ礁島からなる国(ツバル、マーシャル諸島共和国など)があり、有孔虫(ホシズナ)などの石灰化生物が堆積して国土が形成?維持されています。このような国々は、海面上昇により水没の危機に瀕していますが、最近では人間活動にともなう環境負荷の増大により国土を形成するサンゴや有孔虫の沿岸生態系が破壊され、水没の危機が加速しています。藤田教授らは、このようなサンゴ礁島の沿岸生態系悪化について調査を行い、トイレ排水を含む生活排水や廃棄物による水質汚染や島の都市化などが関連していることを明らかにしました。このような状況に対し、藤田教授らは島を取り囲む海水とその潮汐を利用してメンテナンスフリーで生活排水を処理する技術を開発しています。
この国内と世界のスケールの異なる2つの事例に共通しているのは、私たち人間の生活が常に自然から生態系サービスを享受して成り立っていることです。藤田教授は、「私たちが持続的かつ衡平に生態系サービスを享受するためには、問題や課題を科学的に評価し、それを多様な主体が理解し、それぞれが責任を自覚して行動することが必要」とメッセージを投げかけます。
担当者
地球?地域環境共創機構(GLEC)教授 藤田 昌史
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